親愛なる母へ




混乱したままの未央子の視線を、中森が捉えた。

穏やかな微笑みを見ると、いくらか気持ちが落ち着く。

中森は、兵藤とは全く別のタイプだった。

長い髪をゆったりとまとめ、薄化粧で、優しい笑顔が印象的だ。

母親というものを、未央子はようやく想像できる気がした。

中森は静かに語り出す。

中森と未樹は、この街にある短期大学に進学した。

これほど近い場所で、未樹が少なくとも在学中の二年間という月日を生きていたということがまた、未央子を驚かせる。

しかしそれが、立て続けに未樹と関わる人物に会える道理だった。