親愛なる母へ




「いい香りですね。なんだか懐かしいような……」


未央子が率直な感想を述べると、中森は目を細める。

そして口にした次の言葉に、未央子の思考は一時停止した。


「これね、未樹が大好きだったの。初めて飲んだ時、未央子さんと同じことを言ってた」


その衝撃は、まるで頭を強く揺さぶられたようだった。

不意打ちだ。

こんなに早く、それにこんなに直接的に、未樹の面影が現れるなんて。

あまりに突然すぎて、視界が歪むような錯覚に陥った。