親愛なる母へ




彼女に会ったことがあるとしたら、それは記憶にない幼少期ということだ。

それはつまり、未央子の母である未樹が、確かに“母親”になってからの姿を、中森は知っているということになる。

昔話ではなく、未央子に関わる話を聞くことができるかもしれない。

そのことに未央子は緊張した。

するとそこへ、中森のお勧めだというアイスティーが運ばれてきた。

薄く切られたレモンが浮かんでいる。

ストローを差し、一口含むと、茶葉の強い香りを感じた。

控えめにガムシロップが入っているのか、ほのかに甘い。