指定された古い喫茶店は、住宅街の入り口にひっそりと佇んでいた。

扉を開けると、涼しげなベルの音が未央子を迎える。

音に誘われてこちらを見た女性が、わずかに表情を変えた。

おそらく彼女が中森だと思い、小さく頭を下げると、彼女はふわりと微笑んだ。


「未央子さんね」


どうぞ、と言われて、彼女の向かい側の席に着く。


「はじめまして、長坂未央子です」


そう言って頭を下げると、中森は意味深に微笑む。


「実はね。“はじめまして”、じゃないの」


彼女の言葉に、未央子の心臓が跳ねる。