「亮……」


小さく名前を呼ぶと、尚更会いたくなって、未央子は首を横に振った。

まるで恋煩いだ。


「あほらしい」


未央子はそのおかしな感情を振り切るようにひとりごちて、バッグの中から兵藤に渡されたメモを取り出す。

昨日の今日ということもあり、母親の大学時代の同級生である中森にはまだ連絡を取っていない。

本当は亮に相談してからと思っていたが、いつも亮に頼るのは良くない。

講義が終わったら電話をしようと決めて、未央子は歩き出した。