親愛なる母へ




「いいな、一葉は」


未央子のつぶやきは、しかし亮の言葉に遮られる。


「未央子、コーラでいい?」


そして目の前に差し出される、蓋の開いたコーラの瓶。

亮がドリンクカウンターで、チケットと交換したものだ。

未央子が無言で受け取ると、亮は一葉に視線を移して小さく頭を下げる。


「どうも」

「え、あ、こんにちは」


うろたえる一葉に、未央子は亮を紹介する。


「同じ大学の亮。亮、この子が一葉だよ」


ほんの一瞬。

空気が変わったと、未央子は思った。

おかしなところなどないと言われたら、そうなのだと納得できるほど、些細な変化だった。

しかし、一葉が亮と顔を合わせるやいなや固まるのを、未央子は確かに見た気がしたのだ。