親愛なる母へ




「ジェイビーズでした!ありがとう!」


ボーカルがそう言い、四人が後にしたステージでは、次のバンドが準備を始めていた。

未央子は亮とドリンクカウンターに並ぶ。

すると、懐かしい声が未央子を呼んだ。

振り返って目にした笑顔に、未央子は亮を置き去りにして駆け寄る。


「一葉!」

「未央子、来てくれたんだね!ありがとう!」


ライヴの名残か、興奮気味の一葉が未央子に抱きつく。


「一葉、うまくなったね」


一葉を抱きとめながら、未央子は称賛する。


「へへ、ありがと」


照れくさそうに笑う顔は昔のままで、未央子は安心する。

ステージの上の一葉は、手の届かない存在に思えて、未央子は嫉妬と淋しさを感じていたのだ。