親愛なる母へ




未央子は興奮して、傍らの亮の肩を叩く。


「一葉のバンドだよ!」


しかしその声は隣の亮にさえ届かない。

亮がかがんで、未央子の口元に耳を寄せると、ようやくその華奢なドラマーが一葉であることを知る。

未央子は再び、一葉に視線を移す。

一葉のドラムを聞くのは、中学生の頃以来。

その間に、信じられないほど上達している。

技術だけでなく、パワーも増しているように思う。

こうして男性に混ざって演奏しても、負けるどころか一葉が引っ張っているほどだ。

別れる時に交わした約束の通り、音楽を続けて、しかも本気であったことを言葉以上に語っていた。


「一葉……すごいよ」


未央子は胸の高鳴りを覚えた。

そして思う。

自分も負けてはいられないと。