親愛なる母へ




しかし未央子は、彼を探している。

翌日もその翌日も、キャンパスを歩きながら、あの涼しげな顔をした失礼な男を探していた。

丁寧に手洗いしてマスカラと涙を落したハンカチには、上手くはないがアイロンをかけた。

しかしそれを返すのは口実に過ぎない。

未央子はある目的のために、苦労してでも彼を見つけなければならない。

そしてそれに、そう時間はかけられない。