親愛なる母へ




未央子は兵藤の目を見返す。

力強い光をたたえた目だった。

少なくとも彼女は、未樹を信じている。

血の繋がりのある未央子と正反対に、強く。


「会いたいです……大学時代の、母にも」


わずかに震える声でそう言うと、兵藤は微笑んだ。

キャリアウーマンらしい厳しい印象は、既に消えていた。

全てを包み込むような微笑みだった。

未央子はなぜだかそこに、母のような大きな優しさを見た気がした。

未央子にそんな記憶は無いにも関わらず。