親愛なる母へ




兵藤には、未央子が泣き出しそうに見えた。


「でも、あたしはその“事情”が知りたいんです。どうして母があんなことをしたのか。母は、あたしを愛して……」


そこまで言って、未央子は唇を噛んだ。

これ以上言っても、虚しくなるだけだ。

いくら兵藤が、未樹は愛情に満ちた人物だと言っても、そんなことは信じられないし、もしそれが本当だとしても、もう過去のことに過ぎない。

未央子は母親の過去が知りたかったから兵藤に会ったにも関わらず、今では後悔していた。

過去との落差を突き付けられることが、辛かった。