嘘でしょ、とつぶやいて、兵藤は自身を落ち着けるようにコーヒーを飲んだ。
「信じられませんか?」
そう問うと、工藤はしばし思案する。
「私の知る未樹なら、絶対にそんなことをしないと言い切れる。優しくて、愛情に満ちた子だったから」
愛情?
未央子は笑いたくなった。
そんなもの、あのひとは持っていなかった。
少なくとも、自分に対しては。
兵藤は淋しそうに目を伏せて、続ける。
「人は変わるものだけど……。でも、やっぱり信じられない。何か事情が」
「事情があれば、手を上げてもいいんですか」
未央子に遮られ、兵藤は顔を上げる。


