親愛なる母へ




兵藤との約束の日を迎えた。

午後、亮と待ち合わせをして、未央子は今タンデムシートの上で亮の背中にしがみついている。

黒と銀のツートンカラーのフルカウルバイクが、街の中をすり抜けるようにして走る。

兵藤のオフィスに近付き、待ち合わせ場所のカフェを見つけて、亮はバイクを路肩に寄せた。

未央子がバイクを降りてヘルメットを脱ぐと、亮はそれを受け取る。

自らのヘルメットをいつまでもはずさない亮に、未央子が首を傾げていると、


「一人で大丈夫だろ?俺はバイク停めるとこ探して、その辺で待ってるから」


心細いなら一緒に行くけど、と付け加える亮に、未央子は首を横に振る。

それは亮なりの気遣いだ。

未央子も知らない母の過去を、亮は今は聞くべきでないと思ったのだ。


「ありがとう。行ってくる」


少し緊張した面持ちで、未央子は足を進めた。