親愛なる母へ




一葉と笑い合えることはうれしかったが、少し淋しいのは、今の二人の距離のせいだろうか。

未央子は再びベッドに体を預けながら、ため息混じりに言う。


「忙しい……んだよね。あたしとバンドやってる暇はないか」


しかし一葉は、楽しげに答えた。


「やろうよ!あたしも未央子と演りたいもん」


その言葉に、未央子の表情から曇りが吹き飛び、弾かれるように体を起こした。


「ほんとに?」

「うん!一応、小山田にも声かけてみようか。だめだったら、知り合いのベーシストに声かけてみる」


未央子はベッドから飛び降りるようにして、スタンドに立てたままのギターに触れていた。

ほとんど無意識に、木材の手触りを確かめる。

気持ちが前へ前へと向かっていくのがわかった。