電話の向こうで、一葉が続ける。 「一応、毎回声はかけてるけど。チケット売りつけるために」 それを聞いて、未央子は声を立てて笑う。 「うわ。図々しい」 一葉もくすくすと笑みをこぼす。 「まあ、小山田だし」 「そっか。小山田だしね」 小山田少年には悪いと思いながらも、どうしても笑いのねたにしてしまうのはやめられない。 中学時代からそうだった。 ようやく以前の二人に戻った気がして、未央子と一葉は電話のこちら側と向こう側で、それぞれほっと息をついた。