親愛なる母へ




連絡を待ちわびている時ほど電話は鳴らないのに、いざ予定が入ると、次々とそれに重なってしまうのはなぜだろう。

タイミングの悪さにため息がこぼれるのをおさえられず、未央子はベッドに身を投げて天井を仰ぐ。

電話の向こうでは、懐かしい声が平謝りだ。


「もうちょっと早く連絡してくれたら、行けたのに」


過ぎたことは仕方ないとわかっているが、何か言ってやりたくて、未央子はすねたように言う。


「ごめん、未央子……」

「別にいいよ。忙しいんでしょ」


ようやくかかってきた電話で、一葉は自らが所属するバンドのライヴが近いことを告げた。

そして、よかったら来てほしいと。