親愛なる母へ




ようやく落ち着いた未央子が、あることに気付き、そろそろと亮を見上げる。


「亮、講義あるよね……。あたし一人で行くよ、電車で」

「いいって。代返頼めるから。電車だと乗り継ぎで大変なんだから、バイク出すよ」

「でも……」

「遠慮してんの?らしくないね」


いたずらっぽく覗き込む亮に、頬を膨らませて抗議する。


「そういえば亮って、就職決まってんの?いつも暇そうだけど」


後半に皮肉を含めて、未央子は亮を上目遣いに睨む。