親愛なる母へ




「顔。ひどいことになってる」


再び落ちてきた声は、今度は綺麗にアイロンのかかったハンカチ付きだった。

彼の失礼な口ぶりにムッとした未央子は、自身のポケットやバッグを探る。

しかしハンカチを見つけられず、見かねた彼が屈んで未央子の顔にハンカチを押しつけた。

ふんわり香る洗剤の香りに、未央子は不覚にも涙腺を刺激されてしまう。

しかし再びにじんできた涙は、落ちたマスカラと一緒に乱暴に拭き取り、未央子はようやく立ち上がった。