―薄れゆく意識の中で あたしは見た。 何か小さな黒い塊が まだ生まれてない赤ちゃんを さらっていこうとしているのを。 あたしは頼んだ。 「やめて…連れて行かないで…」 『この子が気に入った… 私がもらって不自由はさせない…』 「お願い…みんなが待ってるの」 『この子の誕生は望まれているのか…?』 「あたりまえじゃない」 『いや、ちがうな… お前の両親は望んでいない…』 「…なんですって?」 あたしは耳を疑った。