結婚式当日、清々しいほど天気の良い朝を迎えた。
あのおじさんは朝から忙しそうだ。
「おい、沙耶はまだ見つからんのか!」
「はっ、申し訳ありません!ただいま捜索が難航しておりまして…」
「もう良い!お嬢さん、沙耶の代わりはできるね?」
人遣いの荒いおじさんだな。
権力もあるんだし、しかたないけど。
「はい、お父様」
一言だけでも私は沙耶姫になりきる。
単語一つさえ油断はできない。
「うむ、よろしい。では行こうか。君は姫だ。沙耶、きれいだよ」
「ありがとうございます」
私は沙耶姫の仮面を被る。
これから…いつまで続くかわからない仮面を。