「式の準備は進んでいるか」
「はい、何事もなく進んでおります」
「今回王と結婚できない、なんてことになったら福釈(フクシャク)家最大の恥だ。ぬかりなくな」
そう言って部屋を後にする福釈家の主、将也(ショウヤ)。
「お父様、困ります!私(ワタクシ)はそんな会ったこともない隣国の方と結婚なんてできません!」
後ろから声をかける主の娘、沙耶(サヤ)。
「ここまで来て我儘を言うな!お前は王に選ばれたんだぞ!!」
怒鳴る将也。娘の方を振り返ることはない。
「でも私は…っ「沙耶、頼むよ。相手は数百ある国を鎮圧するほどの権力の持ち主なんだぞ。親族になるほど心強いことはないんだ」
呆れた声で言った後、その場を立ち去る。
一度も娘の方を振り返らなかった。
「お父様のわからずや…」
将也がいなくなった廊下で小さく呟く。