「何?どうした?」

「あっ、ううん。何でもないよ。あ、チョコじゃないもの貰ったならちゃんと食べなさいよー?くれぐれも教室で捨てるとか無いようにね!」

と人差し指を俺の前に突き出した。



「なぁ。何でさ、女子ってそういう行事につられる訳?」

「は?」

「バレンタイとか……そういう行事でしか自分の気持ち言えないの?」


俺は、年に一度のこの行事が大嫌いだった。


「馬鹿馬鹿しい。人の気持ちって、そんなもん?」


そして俺は、未桜が俺にクッキーを渡したことにもイライラしていた。
……この感情がどういうものなのかも良く自分でも分かっている。


「……そういう風に思ってんの?」

「え?」

「何かそれって、違うよ」


と、今まで見た事のない未桜の悲しそうな表情に思わず目を逸らしてしまった。