落ちた体力もそれなりについてきて、
自分なりには、
マシな体作りが出来始めてると思う。



妃彩からのメールは毎日入ってくるけど、
どれも【逢いたい】とか無茶を言ってくる内容じゃなくて
オレの受験を応援するメッセージだった。




その日も学校では、
進路指導部に呼び出される。




一人向かったその部屋には
気難しい顔をした教師が一人。





「金城。

 お前だけだぞ、
 まだ進路が提出されていないのは。

 こことかどうだ。
 
 理工学部だが、
 お前の成績だと安全圏だろう」

「理工学部に行って、
 オレ何やるんですか?

 目的ないままに大学行っても
 時間の無駄ですよ」



そう言うオレの言葉に、
目の前の先生も黙り込む。



「オレ警察官になりたいんスよ。

 ただおふくろが反対してるんです。

 オレの将来、考えてないわけじゃないんで
 もう少し時間ください。

 ただ流されて目的なく
 生きるなんて嫌なんですよ。

 一緒に生きていきたい奴見つけたんで」



そうやって真面目に吐き出した言葉に、
堅物の先生は、バシンっと背中を叩いた。



「ってぇ。
 何、するんスか」

「いやっ、
 ただチャラチャラしてるだけだと思ってたんだがな。
 
 金城は金城で、
 お前の将来を真剣に考えてたんだな。

 わしはお前の何を見てたんだろうな。

 昔から、
 手を焼かされっぱなしだが。

 
 金城、おふくろさんの説得
 一人で難しかったら、ここに連れてこい。

 どれだけお前が真面目に将来と向き合ってるか、
 先生も説得してやる」



いつもの堅物なわからずやの先生が
ちょっぴりオレを受け入れてくれた日、
いつも以上に、
将来のビジョンがリアルに描けた気がした。



「んじゃ、オレ行きます。
 有難うございました」



進路指導室を軽い心持ちで飛び出したのは
初めてかもしれない。



自宅に戻る途中、
図書館で勉強に使う本を借りて
鞄に突っ込むと、
携帯を手にして、メールを確認する。