ドアが開くと、
ふわふわと開いたスカートに、
ひらひらのレースのブラウス。

羽織ものをかけて、
ゆっくりと車椅子を転がしてくる妃彩。



「似合う?
 和花ちゃんと一緒に選んだの。

 氷雨とデートの日に着る
 妃彩の勝負服」



純粋に笑いながら、
ストレート発言するアイツの天然パワーに
少々、生気を吸い取られながら
オレは幸せを感じていた。


車椅子の後ろを押して、
今井が用意した車へと乗り込む。



「最初はどちらへ?」

「何処に行きたい?」



今井の問いかけに、
オレは妃彩に問いかける。


「映画館vv」


嬉しそうにそう言ったアイツの言葉を受けて、
最初の目的地は映画館。



映画館に向かう車内、
サクサクっと携帯を触って、
上映情報を画面に映し出す。



「どれがいい?

 これなんかどうだ?」


そう言ってオレが指差したのは、
海外映画のSFもの。


妃彩は黙って、オレを見る。



「他に見たいのあるのか?」


問うとアイツは嬉しそうに頷いて、
指差した。




マジかよ。



アイツが指差したのは、
コテコテの恋愛作品。



渋々それを承諾して、
映画館へと向かった。



車椅子の生活ってのは、
やっぱり社会は優しくないみたいで、
車椅子だからと言って、
映画館の席は、
前の方の端っこに追いやられた。




こんなとこ、
首は痛ぇし音も悪いだろがっ。




半ば、イライラしながら
座った指定席。



妃彩はそれでも嬉しそうに
オレに微笑んだ。




二時間の映画が終わると、
そのままショッピングセンターを歩いたり、
周辺の公園や、商店街を歩き回る。


妃彩はずっと笑っていて、
この寒いのに、
アイスクリームを嬉しそうに頬張ったと思えば
次はドーナツやケーキにクレープ。


そうやって笑い続ける、
アイツを見てるだけでオレは凄く幸せに思えた。


楽しい時間は過ぎるのが早くて、
あっと言う間に夜が近づいてくる。



確か……今日、
季節外れの花火大会があったはずだよな。