「この辺の族の頭。
 この特攻服着てやってんだよ」



そう言って見せられたのは、
真っ白い特攻服。

裏面には、朱雀の迫力ある刺繍が描かれていて
チームの名前らしい、
紅蓮の文字が同じく刺繍で縫いとめられている。


朱雀模様の下には、何かの文章がやっぱり刺繍で縫いとめられていて
腕には、七代目総長の腕章。


氷雨の名前が、やっぱり刺繍で縫い付けられていた。




「黒田は、紅蓮の特攻隊長。
 同じように、アイツの特攻服もその中にある。

 お名前が知ってる、氷雨は
 不良集団束ねてる、紅蓮って言う暴走族の七代目総長ってこと。

 だからこの辺の奴らの情報は、蜘蛛の巣を張り巡らしたみたいに
 配置されてるチームの奴らから、逐一知らせとして入る」


そう言ってる傍から、氷雨の携帯には着信が入り続ける。



その着信音を切って、携帯を開くと『有政。武村から連絡。エリアB』っと
私にとっての暗号を指示すると、黒田君はすぐに鍵を掴んで飛び出していく。



「氷雨?」

「大丈夫。
 紅蓮は負け知らずだし、有政は強いよ。

 ほらっ、こんな風に入って来るんだ」



そう言って見せてくれた携帯の一文。




氷雨さん、茶房前の繁華街で
影狼に相中の佐竹がやられました。




それだけの文章。



「オレが今、守ってる世界は
 こんな世界なんだよ。

 だから関わるな。忘れろ。
 いいな。

 家まで送ってやるよ。
 オレももう帰るから」



そう言うと氷雨は、特攻服を片付けて誰かに連絡をすると、
ドアを閉めて鍵をすると、隠し場所らしいそこへ鍵を置くと
バイクに乗って私を同じように後部席に誘導する。





七代目総長。


その重さが、役割がそこに関わる人たちにとっての
どんな重さがあるかはわからなかったけど、
どんなに反抗していても、
氷雨は昔とずっと変わらない氷雨だと知った夜。




時雨や、小母さんたちに反対されていても、
氷雨には、氷雨が追い続ける夢を叶えて欲しいと思えた。