「どうした?
 由貴」


生徒会長の双子の弟って言うボジションにあるオレには、
由貴と親しいのも当然、周囲の理解はあるわけで興味本位な視線は注がれても
由貴に何かを行動を起こそうとするものは居ない。


「悪い、氷雨に客だ。
 俺たちが居たら、話せるものも話せないだろ。

 おらっ、お前ら向こうで夜のミーティングするぞ」


そう言いながら有政が気をきかせて、
チームの奴らを別の場所に集合させた。



目線だけで『有難う』っと合図を送ると、
由貴は緊張していたのか、ゆっくりと息を吐き出した。



「バカかっ。
 緊張しすぎて息とめるくらいなら、何で来るんだよ。
 用があるなら、メールでも電話でもしてくりゃいいだろ」


そう言いながら、昼飯の途中だったオレはコーヒーを飲む。


「どうしても電話では嫌だったんで。

 氷雨、氷雨は何をしてるんですか?
 あの日、私に絡んできた人は確かに氷雨のことを知っていました。

 紅蓮って……」



それ以上、突っ込もうとする由貴の口に、
人差し指を押し当てる。


「由貴、深入りはするな。

 お前も、あんなところであんな時間、
 ウロチョロしてんな」

「ウロチョロって、別に氷雨、私は遊んでたわけじゃないですよ。
 バイトの帰りですから」

「そりゃ、知ってるよ。
 だけど幾らあの道が、短縮できて帰宅するのに近いからって
 街灯が少ないだろ。

 人通りも悪い。
 表の道から帰れよ。今度は」


それだけ言うと、由貴は驚いたようにオレを見る。


「氷雨、どうして情報に詳しいのですか?」

「まぁ、今のオレにはいろんな情報が入って来るネットワークがある。

 最近、あの周辺はナイトメアって言う薬物の密売に関わってるとか、
 他校の奴らが次々と学校の校舎やビルから自殺してるとか、
 まぁ、物騒なんだよ。

 お前に絡んできた、影狼のような暴走族もうろついてるしな。

 だからお前は、表道路な。
 遠回りになりそうなら、兄貴にでも迎えに来て貰え」


ふいに茶化すように口にした言葉。


浅間の校風にある、文武両道。

それに宜しく、兄貴も飛翔も武道に精通してる。
無論、オレや有政も、学校の授業が喧嘩に生かされてる。


けど由貴は、武道は苦手だ……。
相手は、遊びじゃない。

だったら戦わせるより、
巻き込まれないようにするのが先決だろ。



「後、紅蓮のこともオレのことも
 一切誰にも話すな。

 いいな。
 んじゃ、午後の授業に戻れ」

「氷雨は?」

「オレは早退。
 ちょっとやりたいことあるからな」

「やりたいこと?」

「まっ、そう言うこと。
 んじゃ、お前は戻った戻った」


そう言いながら、
アイツを返すと昼休みの終了を告げるチャイムが響く。