自動ドアが開いて、
閉鎖された空間から、
解き放たれた明るい世界。
肺いっぱいに
流れ込む空気を
胸いっぱいに吸い込んで。
手だけは、
車椅子の車輪を回し続ける。
徐々に早くなるスピード。
下り坂の勢いもあって、
一気に加速する車椅子。
流れていく景色を感じながら
急な坂道を降りていく。
車椅子の車輪が
悲鳴をあげてるのを感じる。
それでも更に、
車輪を加速させた。
前を向くことすらせずに、
ただ必死に、
ただその瞬間(とき)を
望みながら。
車椅子の車輪が
石らしきものを跳ね飛ばして
大きく傾くと同時に
物凄いクラクションの音が
周囲に響いた。
車椅子から投げ出される体。
蘇る、幼い日の事故の記憶。
私もこれで……
お父さんやお母さんのところに行けるのかな?
何故か、そこに恐怖はなくて……
安心するように、瞳を閉じた。