息苦しさを感じながら眠る夜。

将来の不安に、
悩まされて眠れずに飛び起きる夜。



それでも本音を曝け出すことが出来ない私は、
親友たちにあわせるように、背伸びを続けていく。



等身大の自分の居場所すら見失いながら。



夏休みを受験勉強とバイトに時間を費やして
精神状態的には、ボロボロの状態でもがき続けながら
時間だけが過ぎていった。




夏休み最終日。


その日、夏休み最後のバイトであった、早朝のパン屋さんのバイトをやり遂げ
開店前のパンの仕込みが終わった後、退社。

その後、飛翔と時雨と一緒に何時もの図書館で勉強をして
夕方から夜のバイトとなる、レンタルショップへと向かっていた最中、
飴色の建物が視界に入る。



何時もは目にとめることがなかった景色。


だけど今日は、その景色がとても光っているように見えて
真っ直ぐに無視して行くことが出来なかった。


ポケットの携帯で時計を見つめる。
バイトの時間まではあと40分ほどある。



逃げ出すように飛翔と時雨のもとをバイトを理由に抜け出してきたけど、
だからこそ、こうやって寄り道が出来るのだと自分に言い聞かせる。



公園っぽい遊具のない敷地を通った芝生の絨毯が敷き詰められた先、
飴色の建物へと続く少ない階段とスロープが視界に入る。


ゆっくりと階段を登って、
飴色の扉に手をかけて、ゆっくりとドアを開く。



『あぁぁぁぁぁいぃぃぃぃ』


っと歌ではないメロディーが、
優しくその空間を包み込んでいた。




その場所にいる人たちは、
皆、そのメロディーに乗せられるように
歌ではないメロディーを声に乗せて発し続ける。






見た感じドン引きするような風景かも知れないけれど、
それでも私は、その優しい歌声に意識を奪われた。




『あぁ-あああ。いぃ-いいいい』



今も不思議な暖かい歌声が私の中を包み込んでいく。