なんでこの場から
立ち去ることが
出来なかったんだろう。



事故の日、
あの日で離れてもよさそうなほど
顔も知らなかった関係なのに、
オレは病室から離れることが出来なかった。



オレの傷は打ち身くらいで終わって
湿布薬の世話になりながら
この場所に通い続ける1週間。


打ち身とはいえ、
内出血を起こしてるオレの肩は
バイトをすることも叶わず
オレの代わりには、
兄貴や飛翔たちが順番に
受験勉強の合間をぬって
手伝ってくれた。


相棒は走行できる状態ではなく、
今は、ここまでの交通手段も
電車かバスか歩きのみ。




それでも自宅と
病院を往復してしまうのは、
あの時のコイツが
自分の命を断とうと無茶していた気がして
傍で見守ってやりたいって
そう思ったんだ。


一週間意識なく眠り続けた
コイツが、僅かに目を覚まして、
再び眠り落ちてから、
また四時間ほど過ぎた。



珍しく……一晩中、
付き添わせて貰った日。




あれから再び、
安堵したように病室のベッドで眠り続ける
ソイツを見ながら振り返る。

真っ白な肌をした少女の目は、
今も閉じられていて……。

ソイツから離れようと思えば、
何時でも離れられた。

一週間前、あの事故がなければ
出逢うことがなかった俺たち。

俺自身も加害者ってわけでもねぇんだから、
ここに居る義理もない。

けど……気になって離れられなかった。


コイツが何時起きるかわかんねぇし、
起きたときに傍に居てやりたくて
バイトも兄貴や飛翔、由貴たちに交代して貰った。

アイツらは、
俺の突然の押しつけにも関わらず、
俺の穴を埋めながら、順番に病室へと顔を出す。