唇を噛みしめたオレ自身の力で、
口の中には血の味が広がる。
親父、待ってろ。
米田の親父さんと合流して、
迎えに行くから。
取引現場に背を向けて、
クリスマスに溢れる
人ゴミを掻き分けるように
走り抜けていく。
巻いた油断するたびに、
何度も何度も追いついてくる足音。
遠のいては近づく、
その足音が大きくなる度に
息を殺して、身を潜める。
近づいてくる足音は、
止まることがない。
見つかったのか……。
無事に辿り着けるかどうかわからない。
そう思ったオレは、
兄貴の携帯に、親父からの伝言と、
証拠写真を添付して送信すると
自分の携帯電話のデーターを
全て消去をかけて、そのまま電源を落とした。
覚悟を決めて、
その場所から立ち上がる。
チンピラ系から、
スーツ姿の奴らまで。
勢揃いでお揃いですか……。
ナイフをチラつかせながら、
オレに襲いかかろうとする奴。
「ガキ、
手間をかけさせやがって」
そうやって姿を見せたのは、
親父が同僚だと言ってた仲西徳志。



