だけど同時にオレの脳裏に浮かぶ、
大切なアイツが殺される映像。
そっちの方が、
オレには耐えられない。
そのまま携帯の電源をオフにして、
オレは親父の後を追いかけて行った。
「親父」
声をかけたオレに、
親父の雰囲気は一気に張りつめた。
「氷雨、
何でここに居る」
「ここに居るじゃねえって。
親父、何?
アイツ、高嶋連合の構成員だろ」
息を潜めながら、
親父に話返すオレ。
「氷雨、首を突っ込むな。
早く離れろ。
母さんが心配する。
それに……過ごさないのか?
春宮さんだったか……。
車椅子の彼女と。
付き合っているんだろう」
そう言った親父の言葉に
驚きを隠せなかった。
家庭の事なんて顧みる暇もないっと
思ってた親父が、
そんなことまで知ってる事実。
「そうだよ。
オレは妃彩と付き合ってる。
だから……かな。
安心して逢いたいんだよ。
オレが帰らなかった時期も、
大学病院で親父とあった時から
ずっと大切な奴を守りたくて必死だった。
親父……オレ、見たんだ。
アイツラが薬をさばいてる現場。
取引現場に居合わせて車で轢き殺されかけた。
そんな状態で、
親父なら自宅に帰れるか?」
「その間、何処に居たんだ」
「後輩の自宅。
親父も知ってるだろ。
九紋連合の氷見組。
そこに組長さんに世話になってた。
後輩の親父さんなんだ。
そこには先輩も世話になってるから」
そう言ったオレに、
親父は真剣に向き直って溜息をついた。



