氷雨くんも忘れてた?
受験勉強が忙しすぎて?
でも氷雨くんは……
将来、何になりたいんだろう?
私は今日、
この編み物が気になったから。
もっとうまく作れるようになって、
私が作った編み物が商品になったら素敵だなーっとか、
私も草木染をやってみたいなーっとか。
夢みたいなことだけど、
今まで何もなかった私が、
初めて……将来のやってみたい夢を
感じられた今だから。
「あっ、あの……。
氷雨くん、言いたくなければ
言わなくていいです。
氷雨くんは、何になりたいの?
将来の夢」
あっ、聞き方がおかしかったかな。
将来の夢って、氷雨くんは、
小学生の子供とかじゃないから
やっぱりこういう聞き方じゃない方がよかったかも。
ドキドキしてる鼓動が、
邪魔をして自分で自分が何を言ってるか
わからなくなってる。
沈黙の後……
氷雨くんは、教えてくれた。
「親父みたいな警察官かな」って。
お巡りさんを
目指して頑張ってる氷雨くん。
氷雨くんが考えてることが
また一つ共有できて凄く嬉しくなれた。
「妃彩は?」
「私は……えっと……」
「期末テスト忘れるほど、
編み物してたって言ってたよな。
何作ってんの?」
何作ってんの?
そうやって囁く氷雨くんの声に
胸が高鳴ってドキドキしちゃう。
「今は内緒……。
だってうまく出来るかわからないから。
だけど…… まだうまくできないけど、
少しだけ興味があるもの見つけられた
気がするの。
だから……」
だから……うまく完成したら、
私が作った最初の作品、受け取ってください。
氷雨くんを想って、一編み、一編み
ゆっくりと完成させるから。



