わたしは先輩たちに会わないように、背を向けて歩き出そうとした時
「あれ?亜莉ちゃん?」
わたしの好きな声が聞こえた。
「偶然ですね!」
「家近くなの?」
「はい、すぐそこです!」
さっきから先輩の彼女の視線が痛い。
早くこの場から逃げ出したい。
そう思ってたとき、先輩は驚く言葉を発した。
「じゃあ今から行ってもいい?」
え?今から?だって、彼女さんは?
え?どういうこと?
わたしは先輩の言ってることがわからなかった。
「だって先輩、彼女さんは?」
「あ、彼女じゃないから!」
「はあ!?それどーゆーことよ!」
さっきまで黙ってわたしを睨んでた彼女さんが怒鳴った。
「そんな怒んなって、な?」
「なんであたしがいるのにその子の家行くのよ!意味わかんない!あたしと付き合ってんじゃないの!?」
「付き合ってないよ?」
先輩は表情1つ変えずに言った。
「もういいわよ!」
彼女さんは怒ってどこかへ行ってしまった。
「先輩いいんですか?」
「んー?なにが?」
「彼女さん怒ってましたよ?」
「彼女じゃないって。ちょーど帰りたいなあって思ってたとこだし。ありがと亜莉ちゃん」
「え?どういうことですか?」
先輩は笑って
「家にはいかないよ?嘘ついたの」
そのときの先輩の顔、とても怖かった。
目が笑ってなかった。
蓮くんのあの言葉は正しかったみたい。
『遊ばれないようにな?』
わたし、遊ばれてもいい。
先輩が好きだから。
「先輩、いまから暇ですか?」
「え?なんで?」
「わたしとデートしましょ!」
わたしがそう言うと先輩は呆れた顔をして
「仕方ないなあ、まあお礼として。デートしてあげるよ」
そう言って差し出された手。
わたしはその手を強く握りしめ、先輩と歩き出した。
