天使は悲しい顔をした。




「元気でな、......。」




天使は何か言ったがもう聞こえなかった。




「......アララギ。」




声に呼ばれ重たい瞼を開けた。




すると声の主らしき青年が顔を覗かせた。




「蘭、大丈夫か?」




心配そうな目が少女をじっと見つめる。




「.....誰?」




青年は一瞬苦悩の表情を浮かべたがすぐに穏やかに微笑んだ。




「僕は、夏芽(ナツメ)。君の名は蘭(アララギ)。」




「夏芽.....蘭。」




初めて言葉を知った赤子のように名前を繰り返す。




「君は、さっきまで死んでいた。」



「君は生き返った。」




蘭は黙りこみ、夏芽の顔に自身の顔を近づけた。




「ワタシは蘭。貴方は夏芽、夏芽はワタシを.....コロシタ。」




夏芽は身震いした。




蘭の目は憎しみと殺意と悲しみに満ちていた。