「湊、飛行機の出発は?」

現在の時刻は16時を回っている。

「21時過ぎ」

ゆっくりスプーンでかき混ぜると、湊もコーヒーを口にした。

「まだまだだね……」

いつまで湊に付き合っていなきゃいけないの? 
湊ならお茶でもなんでも付き合ってくれる女の子は列をなしていそうなのに。
あ……そうか、実家に用があって、たまたま私に会ったから、私で暇つぶしをしようって魂胆なんだ。

「そうだな。親父に用があって早く着過ぎた。時間持て余すな……」

湊はスッと私から視線を逸らし、窓の外を見た。
その横顔は少し眠そうに見える。

「……実家で寝てくれば?」

高校の頃、いつ遊びに行っても湊は寝ていた記憶が甦る。
寝る子は育つって言うからね。

外を見ていた湊はコーヒーをもう一口飲み、カップを置く。
私も飲もうとカップを持ったところで、湊が信じられないことを言った。

「ミミ、ラブホ行かない?」

ガチャン!

驚いてカップを乱暴に置いてしまう。

「み、み、湊っ? なに言ってるのっ!?」

「そんな目を白黒させるなよ」

口元に笑みを浮かべながら、余裕の表情の湊だけど、今の私はおそらく顔も真っ赤で、首までも真っ赤になっているはず。
かぁーっと熱くなる身体。