「私も湊といるとラクだよ。気を使わなくて済むし」

本当は湊といると少し緊張する。
心臓が急にドキドキしてきたり、身体が熱くなったり……。
それを意識しちゃうと、きっと湊と話せなくなる。
だから、湊に付き合って軽口を言いあうのがラク。

「お前――」

「お待たせしましたー」

湊が言いかけた時、女将さんが両手にトレーを持って現れて口をつぐむ。

「わぁ~ 美味しそう~」

目の前に置かれた刺身定食の豪華さ。

「ご飯のおかわりサービスですから、言ってくださいね」

女将さんはにっこり言って、去って行った。

「湊、おかわりサービスだって!」

「そんなに食べられんの?」

おかわりに喜ぶ私に、湊は呆れた顔になる。

「それはわからないけど……湊は男なんだから食べられるでしょ?」

湊は肩をすくめて、食べ始めた。