「イッターイ…」


「何が“思い出せないの?”“うん”よ。

見せつけないで!」



お母さんは片手に新聞紙を丸めたのを持ちプリプリ怒っている。

あたしと藤の世界に入っていたのが気に入らなかったみたい…


「それで、アズは思い出せないのね?」


「はい…」



あたしはしっかりお母さんの方に向き直った。


「アズは俺たちが帰ってきた日には“必ず”家事全部をやり、俺たちに一切甘えなかった」


お父さんが穏やかな口調で教えてくれた。


『家事全部』『甘えない』


言われて思い出した。

あたしはお母さんたちが帰ってくるのが分かると2人は休んで貰おう思い、朝から張り切って全てを行っていた。



「私がいっくら目覚ましを止めても早く起きてきて…

私たちを頼ってくれないのかと思っていたわ」