ギューッと強く藤を抱き締めた。


離れていかないで

嫌いにならないで


あたしは想いを込めて抱き締めた。


「アズ、苦しいから」


「だって…藤、この家から出ていっちゃうでしょ?

そんなのヤダァ〜」


あたしはまた泣き出した。

けど藤はそんなあたしを見て笑う。


「アズ、俺はこの家を出ていったりはしないから」


「本当?」


「本当」


「あたしの事、嫌いじゃない?」


「嫌いなわけ無いだろ」


「うぅ…藤のバカァー」


今度は嬉しくて涙を流す。


「藤に嫌われたかと思った。
あたし藤がいなくなったら…ヤダァ~」


「ゴメンな、さっきはからかいすぎた」


「……名前、呼んで」


「名前?」


あたしが突然変な事を言い出しからビックリしている。


「“アズ”じゃなくて“梓”って呼んで」


「梓」


「もう1回」


「梓」


藤は名前を呼びながら背中をポンポンっとしてくれた。
あたしは藤の腕の中で深い眠りについた。