朝、学校に着くと
修ちゃんが先生と何かを話していた。
何かをお願いしているように見えた。

「先生!
なんとか!そこをなんとか!」と
先生は
「部員が集まったら言いに来なさい」
とだけ言い、職員室に戻っていった。

俺はどこか気に入らないような顔をしている修ちゃんに声をかけた。
俺は、修ちゃんが先生となにを話していたか何てことは薄々気づいていたが、
「なに話してたの?」と聞いた。

「軽音楽部を作る。」

予想通りだったが、以外とまともな答えが帰ってきて内心驚いていた。
いつもなら、
「おい!おまえ、入れよ!」といきなり言ってくるのが普通だった。

そして、修ちゃんが俺に差し出したのは
入部届だった。
俺は修ちゃんにギターまで買わされて、
入部する他ないのかと思いながら入部届を受け取った。

俺は高校に入学してからずっと気になってた女の子がいた。
同じクラスの
小柄で吹奏楽部の宮崎花(みやざきはな)だ。
毎日、彼女の優しい笑顔を見るのが楽しみだった。
俺は、優しくされると…ダメなのである。

ついでに、修ちゃんの紹介もしておこう。
田中修(たなかおさむ)。
俺の幼馴染みだ。
同じ高校だが、彼は特別頭がよく、
推薦入試をトップクラスで合格した。
極度の落ち込み屋で、
前に修ちゃんが付き合っていた彼女にフラれた時は、一週間部屋から出て来なかった。
この辺で修ちゃんの紹介は終わるとしよう。

宮崎花の話に戻るが、
そもそもなぜ俺が宮崎さんを好きになってしまったのかというと、
席が隣なのである。
もちろんそれだけではない。
隣の席である故に話す機械が多く、
俺は、彼女の優しい性格にひかれていったのである。
もう一度言うが、
優しくされると…ダメなのである。

そして、今日も彼女と話していて、
最近ギターを買ったんだけど全然弾けないんだよね
なんて話をしたら、
「私もギターやってるんだよ!」
なんたる偶然!!!
そして、なんと、
今度ギターを教えてもらう約束までしてしまった。

家に帰って、
宮崎さんに教えてもらうまでに
せめてコードとやらを一つだけでも弾けるようにしておいた方がいいだろうと思い、
ネットでコードとやらを検索して、
そのなかでもちょっと難しそうな
コードFを必死で練習する俺だった。

そのときにはもう、
朝、修ちゃんから受け取った入部届のことなど
もう頭にはなかった。