「淳平、何でここにいんの?」


「いや、別に…」


淳平は何だか照れ臭そうに口元を手で隠して


「お前がみんなと反対方向に走ってくの見たから、なんかあったのかなって」


「え…」


何それ。すごい、嬉しい。
だって、あたしのこと見ててくれたってことだよね?


「ケータイ忘れて、取りに戻っただけ」


あたしは淳平の前にケータイを見せる。


「そっか。なんだ、心配して損したじゃん。」


心配してくれてたの…!?
やばい。なんか今日の淳平、すごい優しい…


「みんなのとこ、行くか?」


淳平が教室の出口に向かう。

そのとき


ドンッ


「あ…!」


毎年後夜祭の初めと終わりに一発ずつ打ち上げられる花火。

ってことは


「後夜祭始まっちゃったね」


「だな」


今からでも間に合うかな?
校庭を覗きながら確認する。


「今から行くの面倒だから、ここにいよーぜ」


「え?」


淳平は窓際に座り込む。


「幸子行きてえなら行っていいぞ」


もう淳平は行く気が全くないみたいで、ケータイをいじりはじめた。

つまり、あたしもここにいたら、2人っきりだよね!?