翼君は、飛行機とサッカーとハンバーグが大好きな三歳の男の子。

今日もいつものように、大好きな飛行機の本を見ています。

すると突然翼君が、

「ママ!ぼくねぇ、大きくなったら飛行機になるの!!

「だってねぇ飛行機はすごいんだよ!いっぱい人を乗せられるし、お空だって飛べるんだよ!」

「ずっと遠くにだっていけるんだよ!すごいでしょママ!」

それを聞いたママが、

「飛行機はそんなにすごいの?じゃ翼?そのすごい飛行機になってどうするの?」

そう問いただしたママに翼君はニコニコしながら、

「飛行機になって……」

「僕ね飛行機になったらパパとママを乗せておばあちゃん家に行くの」

「そしておじいちゃんとおばあちゃんも乗せて、遠くの遊園地に行くの!」

するとママは、

「あらそうなの?じゃママ、翼が早く大きくなるように、ハンバーグいっぱい作ってあげるわね!」

「ママ、みんなと一緒に遊園地に行くの楽しみだわ!」

「あっそうだ翼!今度の休みにパパと三人で飛行機見に行こうか?」

「えっ本当!やったぁ!飛行機だぁ!早く休みが来ないかなぁ!」

そう言って両手を広げて部屋中を走り回る翼君でした。

それから何日が経ち、今日が約束の飛行機を見に行く日です。

翼君は昨日、早く明日が来るようにと、いつもより早く寝てしまいました。

そのせいか、早く目が覚めてしまいました。

まだ朝までは時間が有りますが、翼君は待ちきれずパパとママを起こしに行きました。

まだお外は暗いのですが、少し早めに出かけることにしました。

車の中で、

「まだ着かないの?」

とパパに話しかける翼君にママが、

「翼!そんなに慌ててもしょうがないでしょ、もうすぐだからもう少し我慢しなさい。」

翼君はママに怒られたと思い、しょんぼりしながら窓の外を見ていると、

そこに、すごい音と共に飛行機が飛んできました。

いつも本でしか見たことの無い飛行機を実際見た翼君は、あまりの大きさに圧倒されてしまいました。

空港に着き、展望台から飛行機を眺めていると、

なぜか元気の無い翼君にパパが、

「どうした翼?元気ないじゃないか?今日飛行機見るの楽しみにしてたんじゃないのか?」

「うん……」

元気なく返事をする翼君に今度はママが、

「翼!どこか具合でも悪いの?」

「ううん!どこも悪くないよ」

そういう翼君に対して

「じゃあどうしたの?」

とママが聞き返すと

「ぼくね!飛行機になれないよ」

「パパやママ、おじいちゃんやおばあちゃんを乗せて遊園地に行けないよ」

「だって僕あんなに大きくなれないもん?僕ママにうそついちゃったよ」

そう半分泣きながら言う翼君にパパが、

「翼!確かに翼は大きくなっても飛行機にはなれない、でもお空を飛ぶ事は出来るんだよ」

それを聞いた翼君が

「本当に?」

と、驚きながら聞き返すと、

「うん!飛行機にはなれないけど、飛行機を動かす人だったらなれるんだよ」

そう言うパパに、

「飛行機を動かす人?」

「そう!飛行機を動かす人!」

「パイロットって言うんだよ」

「そのパイロットならパパやママ、おじちゃんやおばあちゃんを乗せて、お空を飛ぶことが出来るんだよ」

「それだったらママにうそついた事にはならないだろ?」

そう言われた翼君は、急に元気になり、

「うんそうだね!」

「それだったらママにうそついた事にならないし、みんなを乗せてお空も飛べるね!」

「そっかぁ!やったぁ!ぼくパイロットになるよ!」

「飛行機にはなれないけどパイロットになる!」

「ママ!ぼく飛行機にはなれないけどパイロットになるね!」

「そしたらみんなを乗せて遠くの遊園地に行けるから、それまで待っててね!」

そう言って笑顔を取り戻した翼君は、パパとママに両手をつながれ、お家に帰りました。