お嬢様になりました。《番外編》

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チラッと時計に視線を向けると、さっき見た時から五分も経っていなかった。


ティーカップにだって何回口を付けたか分からない。



「少しは落ち着きなさい」

「だって……」



お祖父ちゃんに呆れられ、ショボンっと肩を落とした。


ジッとしていながらも、指先は落ち着く事なく無駄に動いている。



「葵お嬢様、心配せずとも大丈夫ですよ。 海堂様が側に居て下さるんですから」



内藤さんに人懐っこい笑みを向けられ、私は曖昧に微笑んだ。


慣れないパーティーに参加する事自体不安だけど、その前に不安な事が一つ待ち構えてる。


隆輝が私の今のこの姿を見て、どう思うか……それが心配で堪らない。


気に入ってもらえなかったらどうしよう……頑張って慣れない格好したのに泣きそうだよ。


ーコンコンコン。


ノックの音のあと、荒木さんが姿を現した。



「葵お嬢様、海堂様がお迎えにお見えでございます」

「わ、分かりました……っ」



椅子から立ち上がり、緊張のあまり足がもたつきバランスを崩すと、すかさず内藤さんが支えてくれた。



「あ、ありがとうございます」

「いつもよりも高めのヒールですから、お気を付け下さい」



ヒール履いてる事すっかり忘れてた。


私はコクコク頷き、荒木さんに促されるまま部屋を出た。