お嬢様になりました。《番外編》

「どうせ地味なもの選ぶんでしょうから、これにしちゃいなさいよ」



鏡と睨めっこしていると、横から呆れた様な言葉が飛んできた。


どうせって……前から私に対して雑だとは思ってたけど、そんな言い方しなくても……。


根は優しいのに言葉がキツイんだよね。


素直じゃないと言うか何て言うか……橘さんみたいな人をツンデレって言うのかな。



「普段とまた違った雰囲気でとってもいいと思いますわ」

「……そうかな?」



芽衣にそう言われると、そんな気がしてくるから不思議だ。



「海堂さんも喜ばれると思いますわ」



隆輝が喜んでくれる……その言葉が心の奥にスーッと入ってきた。


隆輝の女の好みだとか、好きな服装だとか、好きな髪型だとか……今思えば何一つ知らない。


実際今まで褒められた事も一度もない。


もしかしたらあまり好みじゃなかったのかもしれない。


だとしたら、こういういつも着ない様な洋服を着たら、芽衣の言う通り喜んでくれるかもしれない。



「じゃあ……これにする」

「だったら靴やバッグも選びましょう」

「そうですわねっ」



芽衣と橘さんはワンピースに合う小物類を探す為また店内を見始め、私は着替える為一人試着室に入った。


鏡に映った顔は少し赤くなっていて、綻んでいた。


私って単純。


私の中でこんなに隆輝の存在が大きくなっていたなんて、正直驚いた。


けどその驚き以上に幸せを感じた。