次の日の夕方、待ち合わせのホテルのロビーに着いた。


ロビーのソファに座っている一際目立つ男性が一人。


ロビーに居る女性陣の視線を独り占めしている。



「ごめん、お待たせ」



カルロは立ち上がると笑みを零した。



「待ってないよ。 それにまだ待ち合わせの時間より五分も早い。 どうして日本の人は待ち合わせより早く着いても謝るの?」

「待ち合わせより早く着いても、相手を待たせた事に変わりないからだよ」



納得したような顔をするカルロ。


まるで子供みたいに素直な反応。



「行こうか」



そう言ってカルロは腕が通る程のスペースを作った。


これってもしかして……。



「葵?」



不思議そうな顔をするカルロにとってはごく普通の流れなのかもしれない。


別に疚しい意味は無いんだし……と、自分に言い聞かせ、隙間に腕を通し、カルロと腕を組んだ。