お嬢様になりました。《番外編》

会場の端の、人気の少ない場所へ移動した。



「はい」

「ありがとう」



玲からオレンジジュースの入ったグラスを受け取った。


気まずい。



「海堂と付き合ってるんだよね?」

「うん」

「俺は海堂だから身を引いたんだよ」



普段顔を合わせれば小言ばかり言い合う二人。


だけど、玲と隆輝はきっとお互いの事を認めてるんだ。



「海堂以外の男のところに行くつもりなら、俺も葵の事諦めないよ」



私は首を横に振った。



「私は隆輝が好きだよ。 でも、全然上手くいかなくて、気持ち中々伝わんなくて……隆輝はこんな私の事なんか、もう嫌いかもしれないって思ったら凄く不安で……」



こんな事玲に言う事じゃないのに……っ。


ヤダ……涙が……。


咄嗟に俯くと、目から涙が零れ落ちてしまった。


頬に玲の指が触れ、涙をそっと拭ってくれた。



「カルロに泣かしたら許さないって言われたのに、早々に泣かしちゃったね……ごめん」

「勝手に泣いちゃったんだから、ごめんは私の方だよ」



自分の手で涙を拭い、思わず苦笑いが漏れた。