お嬢様になりました。《番外編》

磯山会長と離れた途端、隆輝が小さく舌打ちした。


驚いていると、隆輝がボソッと声を漏らした。



「金の為ならどんな汚い手も使う糞野郎が……」



軽蔑している声。


いきなり腰を抱かれ、グッと距離が縮まる。


嬉しさと恥ずかしさに浸る時間はなく、隆輝が歩き出したため、私も慌てて足を動かした。


隆輝が色んな人に挨拶している間、私はただニコニコ笑っているだけ。


求められれば挨拶をする。


私って一体何なんだろう。


これならべつに連れて歩くのは、私じゃなくてもいいんじゃないかと思う。


もっと綺麗な人にパートナーになってもらえば良かったのに……。


こんなに明るくて賑わってる場にいるのに、気分が嫌になるくらい沈んでいく。


何度目かの挨拶が終わり、やっと二人になった。



「ちょっと風に当たってくる」

「俺もいく」

「いいよ。 だって……」

「海堂さん?」



『まだ挨拶終わってないんでしょ?』と言う前に、またしてもスーツを着た男性に声を掛けられた。


私は笑顔で会釈をして、隆輝から離れた。


一人になって少し頭をスッキリさせたかった。