いや、違う。 愚か者の「ように」 というのは間違いか。 僕は本当に、 どこまでも、愚か者だから。 〝703号室〟 眼前に映る、その文字。 薄っぺらい病室のドアは、 そびえる壁のように大きく、硬く。 手を触れることなど、 無駄なことであるような気がした。 この奥に、あいつがいる。 冬野さん、いや―――、 桜が。 「……愁?」 『んぁ!?』 不意に響く声に 思わず肩をすくめた。