私もバスに乗ると、
内野くんの隣に腰かけた。

「え、隣に座るの?」

内野くんは驚いたように
口を開いた。

「あ、悪かった?じゃ、席移るよ」

立ち上がったとき、
内野くんは私の手首を
パシッと掴んだ。

「いや、隣でいい」

顔を背けて言う彼の顔は
少しだけ赤く染まっている
ような気がした。

私は黙ってまた、彼の
隣に腰かけた。

まもなくバスは海に
向かって走り出した。

バスの中では
2人とも無言だった。

なぜなら内野くんは
寝ているし、私は

彼を起こしてはまずいと思い
携帯をいじって弄んでいた。

あと10分はバスに
乗っていないといけないだろう。

そんな中、着々とバスは
海に向かって走っている。

私たちを乗せて。

着々と、着々と。