「サンキュー」

と言って、内野くんも
照れたように笑った。

「どこ行くの?」

私が問いかけると

「海だよ、海」

と内野くんは言った。

「え、海?私、水着持ってないよ?
てか、海なんて地元にあるじゃない」

私がそう言うと、

「だから、地元の海に行くんだよ。
歩いていくと暑いし、遠いから
バスで行くの!てか、泳がないから」

内野くんはそう言いながら
バスターミナルまで行こうとした。

私は慌てて彼の後を追った。

「待ってよ」

と言うと、内野くんはピタリと
足を止める。

「早いんだから…もう」

「ごめん。俺、女子のことあまり
知らないから手加減を知らないんだ」

「え…」

意外だった。

内野くんは目、鼻立ちも整っているし
皆に親切だから女の子の扱いにも
馴れているのかと思っていた。

「内野くんって、女の子と
付き合ったことないの?」

「は!?」

私の問いかけに
内野くんは酷く驚いたようだ。

「あ、いや、なんでもない」

私は手を思いきり横に振った。

「…あ、そう」

内野くんは苦笑して
目の前に止まっている
バスに乗った。