「青……っ」


真昼が玄関に靴を脱ぎ捨て、わたしに抱きついてくる。


わたしよりほんの少しだけ背の高い細っこい身体を受け止めながら、耳元で謝罪の言葉を聞いた。


「青、ごめんね」


「いいよ」


……どうせ、今回のことの記憶が薄れたころに、別のいたずらを思いつくんだろうけど。


真昼のどうしようもない、わがままないたずら好きは、いまに始まったことではないから。


抱擁をとくと、わたしは再び真昼と目を合わせた。


「真昼」


「何?」


「ありがとね」


「……?」


なんのことかわからない真昼が不思議そうな顔をする。


「こないだ、わたしが泣いた時、心配してくれたんでしょ?新田から聞いたの。」


ちょっとニュアンスが違った気がしないでもないが、だいたいあっているだろう。


「……心配してたって、りゅ…新田が言ったの?」


「うん」


真昼はしばらくむっつりした顔をしていたが、突然ボッと頬を赤らめた。


「ど、どしたの、真昼っ」


「な、んでもない‼」


そう叫ぶと、真昼はわたしの横をすり抜け、階段を上がって行ってしまった。


わけのわからないわたしはしばし唖然として真昼の行った方を見つめた。


「何なんだろ」


ポツリと、空しい独り言をはいてみた。